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美容コラム/ Beauty column

ヒアルロン酸治療の血流障害や壊死のリスクを徹底解説

作成日:2025.1.28

ヒアルロン酸治療の血流障害や壊死のリスクを徹底解説
最近SNSなどで、ヒアルロン酸のきれいな症例が出てきますね。
手軽にできるプチ整形できれいになれるなら良いですね。
以前のコラムでヒアルロン酸の症例写真の注意点を解説させていただきました。
注意点としてヒアルロン酸の効果は直後ではなく、1週間後の症例写真を見ましょうとお話しさせてもらいましたが、 今回のコラムではヒアルロン酸の重大なリスク、血流障害についてお話しします。

血流障害は稀にしか起こらないものですが、もし起こってしまったら早期にヒアルロン酸を溶かさなければ後遺症が残ってしまいまいます。
考えるのは怖いかもしれませんが、顔にヒアルロン酸を入れる以上、リスクを完全にゼロにすることはできないので、血流障害はどういうもので、どんな状態ならすぐに連絡して対応してもらった方が良いか知っていただく必要があります。
血流障害とはどういうものか、起こってしまったらどう対応するのかなどについてこのコラムで解説していこうと思います。

このコラムは、ヒアルロン酸の施術を受けるお客さんだけでなく、ドクターの方にも少し参考にしていただけると幸いです。

 

血流障害とは

 

ヒアルロン酸の最大のリスクは今お話しした血流障害ですが、血流障害とはどういう状態を言うのでしょうか。
血流障害はヒアルロン酸を注射した際に、誤って動脈(場合によっては静脈)にヒアルロン酸を注射して血管を詰まらせてしまったり、血管に直接入らなくても血管が圧迫されて血流が届きにくくなって組織がダメージを受けてしまうことを言います。

なぜ最大のリスクかというと、血流障害がおこると、組織に血液が届かなくなり組織が壊死してしまうからです。
壊死すると皮膚がはがれて、組織が欠損します。
ただ、幸いヒアルロン酸は溶かすことができます。
仮に血流障害を起こしたとしても早期に気付いてヒアルロニダーゼできちんと溶解することができれば、組織も回復して特に問題になることはありません。
ただ、それと気づかず放置してしまった場合が不幸になります。

時間が経ってしまうとヒアルロニダーゼで溶かしたとしても、組織は回復しません。
いかに血流障害に早く気づいて対応するかがその後の回復に大きく影響します。
ちなみに、このヒアルロン酸による血管塞栓のリスクは0.001%、つまり10万人に一人と言われています。
交通事故の確率が0.2%と言われているのですごく少ないですね。
ただ、個人的には、今までいろいろ見聞きした経験からするともう少し多いように感じます。
稀なことではありますが一定のリスクで起こることではあります。

ヒアルロン酸の注射というのは多くの新人ドクターがまずおこなう手技の一つで、経験の浅い先生がやることも多い治療です。
血流障害のリスクや対処法をあまり知らないドクターがおこなうのは怖いことですよね。
ただ、血流障害はベテランの先生でも起こす可能性があります。
ベテランの先生だから絶対に起こらないということはありません。
経験のある先生の中には、今までそんなことは起こしたことがないから大丈夫とか、注射の仕方が悪いんじゃないかとか言う先生もいます。
そのような油断は逆に危ないです。

顔に注射をする以上、誰もリスクは完全にゼロにはできないからです。
きちんと知識を持って注射をおこなっているドクターはいらっしゃいますが、現状は、美容外科に携わる先生が増えてきている中で、血流障害とか、特に眼動脈が詰まった場合にどう対応したら良いかなどの知識があやふやなままにヒアルロン酸注入をおこなっているドクターもかなり多いのが現状です。

ちなみに他のコラムでも解説しますが、眼動脈が詰まると失明します。
慢心せずに、なるべくリスクの少ない注入方法で注入をおこない、仮に何かあった時のシュミレーションをしている先生だと安心ですね。
きちんと準備ができている先生とできていない先生では、一刻を争う事態になったときに結果に差が出てきます。
そういう意味ではヒアルロン酸注入と言えども、クリニックやドクター選びはとても大切になってくると思います。

 

 

血流障害の起こりやすい部位

 

次に血流障害が起きやすい部位について少しお話しします。
外頚動脈と内頚動脈の吻合

鼻翼基部

 

結論から言うと、血流障害は顔のどの部位でも起こりうることなんですが、それは前提に、あくまで血流障害の比較的有名な部分についてお話しします。
血流障害でよく聞く部位としては、まず、ほうれい線の鼻横部分ですね。
ほうれい線・ゴルゴ線
ここが詰まると、鼻先や小鼻などへ行く血流が悪くなるのは有名です。
ただ、鼻横や鼻根・目頭あたりも虚血になるリスクがあります。

鼻横のほうれい線は後で書くように骨膜上が安全なのですが、皮下に注入してしまうと血管塞栓のリスクが高くなります。

 

あとは有名なところでは鼻もそうですね。
鼻根
鼻すじにヒアルロン酸を入れた場合も、鼻先に入れた場合にも血流障害がおこった例は聞きます。
残念ながら失明した例も聞きます。 鼻筋は真ん中のライン(正中)から、少し横にそれると動脈が平行に走っています。
そこに誤ってヒアルロン酸を注入してしまうと、血流障害を起こしてしまいます。

鼻先の場合は、血管がネットワークを作っていて誤注入しやすかったり、圧迫で血流障害を起こしやすい部位です。
鼻は全体的に目に比較的近い部分なので眼動脈まで逆流して失明のリスクもあります。

 

 

その他、血流障害を起こしやすい部位

 

あとは、眉間も血流障害を起こしやすい部位かと思います。
別のコラムにも書きますが、眉間も眼動脈に近いので失明のリスクが高い部位になります。

他には、額、こめかみ、唇、アゴなどの血流障害も見たり聞いたりしたことがあります。
こうやって挙げていくと、顔のどの部分でも起こりうる部分だということが分かってもらえるかと思います。

先ほども言いましたが、動脈が通っている以上、顔のどの部分でも起こりうるリスクです。
なので、顔にヒアルロン酸を注入した場合、血流障害が起こってしまったらすぐに対応できるように常に頭の隅にとめておくことが大切です。
写真は、失明に至る可能性のあるヒアルロン酸注入部位です。
失明に至る注入部位

今までの話で、とても怖く感じたのではないかと思いますが、血流障害は避けられないことで、運任せなんでしょうか。
血管の走行には個人差があったり、いろいろな条件が重なったときにヒアルロン酸の血管塞栓がおこるので、運の部分は確かにあります。
ただ、注入のやり方次第で血流障害のリスクを減らすことはできます。それについては後述します。

 

 

血流障害の症状

 

症状の一つに痛みがあります。

注入後は塞栓部位に痛みが強く出ることがあります。ただ、痛みがあまりないこともあります。
一番大切なのは虚血による皮膚症状です。

この皮膚症状は、時間の経過と共に皮膚の状態は変わってきます。

 

<虚血の皮膚症状の一般的経過>

(注入直後~数分)動脈の支配領域部分の色が白くなる( Blanching)
(数時間~)リベドと呼ばれる、網状の赤い模様のような色味になります。 
リベド画像
 ⇓ うっ血を示す、血管の拡張。網状でい場合もあります。
(数時間~翌日以降)青紫色・暗い紫色になる  虚血の程度が弱いと赤く、完全に虚血になると灰白色になる傾向 皮膚の色は一部黒くなったりします。
⇓(3~7日)ニキビのような膿疱、水疱、かさぶた、 皮膚がはがれる潰瘍などがおこります。
これらの皮膚症状は明らかに内出血とは違う症状です。
ちなみに内出血はこんな感じです。
内出血の画像
分かりますでしょうか。黄色く薄いのは内出血とわかりやすいかと思います。
一部赤紫色の内出血がありますが、動脈で栄養されている範囲というよりは地図状に部分的に限定された範囲で出ています。
血流障害の場合はもう少し動脈の支配領域全体的な血管の拡張が見られます。
また、内出血の赤紫色は血管の拡張という感じではありませんね。
内出血の場合は指で押しても色は変わりません。

 

こんな感じの内出血でなく、虚血を示す皮膚症状だった場合、見逃さずに、早めにヒアルロニダーゼなどで溶かすことが重要です。
もし見逃してしまった場合は、程度にもよりますが、皮膚が剥がれたり組織が欠損したりして傷が残り、再建の手術が必要になってくることがあります。
ドクター側においても早い段階で血流障害に気付くというのが大切です。

処置中に、皮膚の色が一部白くなったのにもし気づいたなら、事の重大性を理解していていきちんとすぐにヒアルロニダーゼを注入する必要があります。
この段階できちんと適切なヒアルロニダーゼの注射が行われていれば大きな問題になることはあまりないかと思います。

 

<時間が経って皮膚症状が出てきた場合>

次に、処置中に白くなったりせずに、もしくは大丈夫かと見逃されて家に帰った場合、先ほど話した、赤い血管の拡張が、数時間~1日経って出てきます。
動脈が圧迫されたり、静脈性の塞栓の場合は、時間が経って症状が出る傾向があります。
その際にこんなものかと放置せずに、重要な血流障害のサインだと気づくことがとても大切です。
そして一刻も早くヒアルロン酸を溶かしてもらう必要があります。
この段階で気づいてもヒアルロン酸を溶かしたとしたら、しばらく色味は残るかもしれませんが、回復が可能かと思います。

 

 

血流障害の治療法

 

では、ここで、血流障害になった場合の治療法についてお話しします。
先にも話しましたが、血流障害になったとき最も大切なのが、ヒアルロニダーゼを注射することです。

動脈が詰まっているのは注入部位だけでなく、血流にのってヒアルロン酸が飛んでしまっている可能性があるので、皮膚の状況を見て虚血になっていると思われる部分全体にも、しっかりヒアルロニダーゼを注射する必要があります。
症状が落ち着くまで繰り返しておこなう必要があります。
状況を見ながら、何日かは毎日通院して注射する必要があります。
できるだけ早くヒアルロニダーゼを注射するのが唯一と言っても良い効果的な治療法です。

 

当院では、ヒアルロニダーゼは2種類をご用意しております。

 

また、血流を良くするためにマッサージしたり、虚血部位を暖めたりすると良いとも言われています。
血管拡張薬や抗血小板薬や抗凝固薬も有効と言われています。
あとは、高圧酸素療法をおこなったり、ステロイドの注射も有効と言われています。

以上いろいろ治療法は言われていますが、大事なのは、何度も言いますが早期にヒアルロニダーゼを注射することです。
そして、あとは血管拡張薬を内服・点滴したり、患部を暖めたり、マッサージしたりして様子を見るのが良いのかと思います。

 

 

血流障害になりにくくするための方法

 

いろいろと怖いリスクばかり話してきましたが、前にも話したように、血流障害になりにくくする注入方法というのがあります。
通常その注入方法にのっとっていれば血流障害のリスクをぐっと減らすことができます。
血流障害になりにくくするにはこれから言ういろいろな工夫があります。 
お客さんにも知識として知っていただければと思いますし、新人のドクターにも参考になる部分があればと思います。

 

①安全な骨膜上や真皮層になるべく注射する。

②正中(真ん中)は安全なことが多い。

③少量ずつ注射して一か所に一度にボーラスで入れない。

④組織の持ち上がりを必ず確認する。確認できなければ中止する。

⑤最小限の圧で入れる。圧力をかけすぎない。

⑥なるべく持続して入れない。間欠的に入れる。

⑦都度逆血を確認する(バックフローがないからと言って血管に当たっていないとも言えない。)

⑧刺入時に患者さんが痛みを訴えたら注入しない(血管に当たっているリスク)

⑨患者さんの手術(特に鼻)や多数のヒアルロン酸注入歴、外傷の既往がある場合は注意、もしくは避ける。

⑩鈍針(カニューレ)を使う。

鈍針(カニューレ)

以上の方法を組み合わせながら注射していくとリスクを減らすことができます。

また、解剖的に、この部位は皮下が危ないので骨膜上が良いとか、この部位は皮下のこの層に打っても大丈夫とかもあるので、部位別の注入方法に精通する必要があります。
血管の走行には個人差がありますし、何度も処置を繰り返している方は、癒着や構造の微妙な変化などがあります。
その場合思いもかけない血流障害に遭遇してしまう可能性はあります。
なので、リスクを減らす注射方法をおこないながら、何かの時にはきちんと対処できる準備をする必要があります。

 

注意点!

 

ここで注意点です。
先ほどカニューレと言いましたが、 鈍針(カニューレ)だからと言って安心はできません。
よく、カニューレを使っているから血流障害は大丈夫ですと言っている先生がいますが、あれは間違いです。
細いカニューレは普通に血管壁を貫通します。
鈍針(カニューレ)
22Gという太いカニューレでも血管の塞栓や失明の症例報告はあります。
このゲージは数字が大きいほど細くなるのですが、顔のヒアルロン酸で通常使うカニューレは30Gとか28Gとか25Gとかで、22Gよりもっと細いカニューレなのので血管に入ってしまうリスクはあります。

普通の先がとがった針(鋭針)よりはましだというくらいの認識で思ってもらうと良いです。
鈍針(カニューレ)だからと言って安心はできないと思ってください。

ただ、血流障害のリスクを減らすためには鋭針よりは鈍針の方が良いとは言えます。 

 

あと、ヒアルロン酸の注意点としては、経験が多い先生はもちろんなのですが、リスクの少ない注入方法をおこなって、何か起こったときすぐに対応できるように準備ができている先生が安心ということです。
これを見極めるのは難しいかもしれませんが。 経験が多くても、先ほど言いましたが今まで問題なかったから大丈夫と言って油断している先生も不安ですね。
たまたま運よく起こらなかったかもしれませんが、熟練している先生にも起こりえることはきちんと準備する必要があります。
症例数が多くなると必ず一定数のリスクは出てきます。
大手クリニックでは先生の入れ替わりが激しく、新人の先生も多く、いろんな先生もいます。

表に出てこないだけで、水面下でいろいろな血流障害の事故が起こっています。
料金がお手頃なのも大事ですが、体のことなのできちんと安心できる先生に任せるのがおすすめです。

 

まとめ

 

以上がヒアルロン酸注入の血流障害についての解説でした。
血流障害は怖いですが、すごくまれな合併症で、すぐに対処できれば特に問題なく経過する場合がほとんどです。
ヒアルロン酸はダウンタイムも少なく、手軽にできる効果の高いプチ整形なのでおすすめできる施術です。

ただ、まれに起こる血流障害は迅速に対応することが重要になるので、あえてこういう動画を作って皆さんに知ってもらえるように注意喚起させてもらいました。
何度もしつこく言いますが、血流障害の症状がもし出たらすぐにやったクリニックに連絡してヒアルロニダーゼで溶かしてもらってください。
少しでも不安なことがあればすぐに先生に診察してもらってください。大丈夫かなと放置するのは危険です。

あとは、お客さんだけでなく、ヒアルロン酸を注入する先生にも、常に血流障害のリスクを想定しながら施術をおこなってほしいと思っています。
このコラムを見た方にはぜひ参考にしてもらって、今後対処がまずくて血流障害の後遺症を残したりするような不幸な方が出ないことを願っています。 

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~執筆者紹介~

西尾 謙三郎 医師
医師
もとび美容外科クリニック 院長
西尾 謙三郎
経歴
平成14年 札幌医科大学医学部医学科 卒業
平成26年 もとび美容外科クリニック開院
資格
美容外科専門医(JSAS)
日本アンチエイジング外科学会専門医
アラガンボトックスビスタ 認定医
所属学会
日本美容外科学会(JSAPS)
日本美容外科学会(JSAS)
日本形成外科学会
日本美容皮膚科学会
日本加齢医師会
日本レーザー医学会
日本美容外科医師会
18年以上の実績を持つ美容外科専門医。丁寧で繊細な施術でお客様の望む実現を目指す。
「お客様のもつ本来の美しさを引き出す」ことをモットーに「もとび」美容外科クリニックを設立。

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