鼻の整形手術、耳介軟骨移植って?耳介軟骨移植の効果とリスク・失敗について医師が解説
作成日:2024.6.11 更新日:2024.7.9
目次
耳介軟骨移植とは
耳介軟骨移植とは、耳から採取した耳介軟骨を鼻先に移植する手術です。
耳介(耳)のパラボラの凹みの部分とか、耳の穴の蓋の軟骨(図の黒い斜線の部分)を、耳の裏などを切開して採取します。
鼻翼軟骨(下図参照)というのが鼻先の骨格としてありますが、鼻翼軟骨の上に耳介軟骨を加工して載せます。
上図のように鼻先に高さを出すことができます。
軟骨は通常2枚や3枚重ねて載せます。
下方向に載せる場合は盾のような形で載せますので、shielgraftと呼ばれており(図)、正面方向に載せる場合は帽子のように載せますのでcap graftと呼ばれたりします。
耳介軟骨移植の施術法と効果について
耳介軟骨移植は、単に鼻先を高くしたりするためだけでなく、いろいろな移植の仕方があります。
鼻孔縁を伸ばしたり、鼻柱基部を引き出したり、鼻翼軟骨を補強したり、他にもいろいろな形で用いられます。
基本的にアップノーズを改善したい方では下方向に軟骨を移植し、鼻先の正面方向に高さを出したい方は鼻翼軟骨の上(正面)に軟骨を載せて固定します。
正面方向にだけ高くなるとアップノーズになり、下方向にだけ伸ばすとたれ鼻になったりするので、基本的に下方向と正面方向に同時に軟骨を載せて、斜め下に高さを出すことが多いです。
ただ、一般的に耳介軟骨移植というと移植軟骨を鼻先に載せて鼻先を高くする手術のことを指します。
また、ストラット(支柱)という軟骨移植もあります。(下図)
ただ耳介軟骨を載せても鼻翼軟骨は柔らかいので、土台が押されて沈んで高さが効果的に出にくくなる可能性があります。
ストラットを、鼻翼軟骨の内側脚に挟んで固定して内側脚を補強することで鼻翼軟骨を沈みにくくします。ストラットは耳介軟骨移植と組み合わせてよくおこないますが、ストラットを立てると耳介軟骨を載せる土台がしっかりとするため、鼻先の高さがさらに出やすく後戻りを減らすこともできます。
ちなみに、ストラットは鼻中隔延長(後述参照)みたいに固定するのではなく、鼻翼軟骨の土台を補強するだけですので鼻先の自然な動きは保たれます。
あと、耳介軟骨移植は通常クローズ法(下図赤線部分を切開)で行うので傷は鼻の穴だけですので目立ちません。先生によってはオープンでやる先生もいます。
当院では、耳介軟骨移植の際は、患者様のご希望を考慮し、あらかじめ画像からシュミレーションして型紙を作っておきます。
それを、手術中にあててみて、移植軟骨の固定位置や高さを調整して、きちんとシュミレーション通り高さが出ているか確認しています。
軟骨移植の際は、ずれて左右差がでないように、移植軟骨を鼻翼軟骨にしっかり縫い付けて固定し、さらに軟骨に通した糸をプルアウトと言って皮膚側に引き出してテープで固定してずれないようにしています。
鼻整形手術「耳介軟骨移植」と「鼻中隔延長」の違いは
鼻手術を希望される方でご希望として多いのは、鼻先を高くしたり伸ばしたいというご希望ですが、その効果を出す手術にはご存じかと思いますが、基本的に2つあって、耳介軟骨移植と鼻中隔延長術になります。
耳介軟骨移植
耳介軟骨移植は先ほどご説明したように2,3枚の軟骨を重ねて鼻先に載せますので、3㎜前後の厚みを出すことになりますが、鼻翼軟骨は動く部分ですので沈み込みます。なので、耳介軟骨移植はだいたい1~2㎜の厚みを出すようなイメージの手術になります。
たったの1~2㎜かと思われるかもしれませんが、お顔の数ミリというのは、思っていらっしゃるより変化を出すことができます。
鼻中隔延長
2,3㎜以上のしっかりした変化をご希望であれば、鼻中隔延長と言って伸ばした鼻中隔に鼻翼軟骨を伸ばして固定する手術が良いです。
移植軟骨を使って鼻中隔を延長し、そこに鼻翼軟骨を伸ばして固定する方法です。(下図参照)
鼻先を固定して伸ばすので鼻先をしっかり伸ばすことができます。
ただし、鼻中隔延長はリスクとして、鼻先が固定されて動かなくなったり、笑うと矢印鼻っぽくなったり、あとで鼻先が曲がってきたり、鼻の通りが悪くなったり、見える部分に傷ができたりと、耳介軟骨移植に比べてリスクが増えてきますので、口コミなどを見られて敬遠する方も多いです。
リスクが少ない方が良いという方や、自然な変化が良いという方は多く、耳介軟骨移植は人気の施術になっています。
鼻中隔延長と鼻尖軟骨移植との比較についてはこちらで詳しく
次に、耳介軟骨移植のリスクについて詳しくご説明します。
耳介軟骨移植のリスク・失敗について
耳介軟骨移植6つのリスクについて
①耳介軟骨移植のリスク「鼻と耳の切開」
耳介軟骨は、耳の裏側を切って軟骨をくりぬいて採取しますので、鼻だけでなく耳を切開する必要があります。
画像のように傷は耳の裏の見えない部分ですし、ひっぱってみるとしわのようになっていますが、引っ張らなければ目立ちません。
軟骨はフレームを残してパラボラの部分をくりぬきますので、表側はあまり変形しませんので手術したことは分かりません。
ただし、耳はケロイドができやすい部分なので、術後しばらく経ってから、耳の後ろの傷の部分が盛り上がってまれにケロイドができてしまうことがあります。その場合は切除などの処置が必要になることがあります。
②耳介軟骨移植のリスク「浮き・透け」
耳介軟骨は吸収されにくい素材のですが、そのぶん長期的に皮膚が薄くなって軟骨の形がやや透けてくることがあります。
ただし、自己の組織なのでプロテーゼのように飛び出してくるリスクはありません。
軟骨を何枚も重ねて無理やり高さを出そうとすると形が浮きやすくなるので、当院では形が浮かないように気をつけて厚みを調整しています。
また、軟骨の輪郭が透けるのを予防するために、軟骨の角を落として滑らかにし、軟骨をつぶして柔らかくする処理をおこなっています。さらに、状況により移植軟骨に軟部組織を載せて厚みをだし、なるべく軟骨が浮かないようにもしています。
③耳介軟骨移植のリスク「後戻り」
耳介軟骨移植は鼻翼軟骨の上に耳介軟骨を載せて厚みを出して鼻先のラインを整えるように鼻先に高さを出すものです。
土台の鼻翼軟骨は鼻先を押さえていただくとわかるように、よく動く軟骨です。なので、耳介軟骨を載せると、土台の鼻翼軟骨が沈みこんで後戻りするリスクがあります。どちらかというと正面方向は戻りやすい印象があります。
なるべく後戻りを減らしたい場合は、土台を強化してなるべく沈まないように内側脚の間に軟骨の柱(ストラット)を立ててあげると土台が強くなって後戻りのリスクを少し減らすことができます。
④耳介軟骨移植のリスク「傷」
鼻先の手術の場合、オープン法とクローズ法の2通りがあります。
当院では耳介軟骨移植はクローズ法でおこないますが、オープン法でおこなう先生もいらっしゃいます。
その場合は、鼻柱を切開するので見える部分に傷が残ります。
オープン法の傷はそれほど目立たないことが多いですが、よく見ればわかる傷になることもあり、傷を外につけたくなければクローズ法でおこなってくれる先生にお願いしたほうが良いです。
前にも言いましたが、当院では耳介軟骨移植はクローズ法でおこなっており、ストラットもクローズでおこないます。
再手術の場合もできるだけクローズ法で対応するようにしています。
⑤耳介軟骨移植のリスク「左右差・ズレ」
鼻先に軟骨を載せますので左右差やズレのリスクがあります。
特に、鼻先を剥離して空間を作り軟骨を挿入するだけのやり方でおこなうと左右のずれや軟骨が回転してしまうリスクが高くなります。
当院ではポケットを作って軟骨を挿入するだけという方法は通常行っていません。
しっかり鼻翼軟骨を露出させて形成し、伸ばしたい位置に正中に確実に糸で固定します。移植軟骨が回転しないように複数個所固定します。
さらに、狙った位置にきちんと移植軟骨が収まるようにプルアウト固定と言って、移植した軟骨に通した糸を、適切な位置の皮膚側に引き出して軟骨がずれないように固定しています。なので、あまり当院では軟骨がずれたというクレームは経験ありません。
ただし、もともとの軟骨の左右差がある方はいらっしゃって、きちんと正中に入れたとしても、ずれているように見えてしまうリスクは理論的にあるかもしれません。
⑥耳介軟骨移植のリスク「腫れ・内出血・感染」
耳介軟骨の移植は耳と鼻を切開する手術ですので、手術による腫れや内出血、感染のリスクはありえます。
腫れに関しては、鼻先はそれほど腫れが強く出る部分ではないので、あまり目立つことはないです。ただ、数週間は少しむくんだ感じがあるかもしれません。鼻先の皮膚は厚いので鼻に内出血が出るリスクも少ないです。
ただ、耳に関しては、内出血が重力で落ちて、耳の下の部分が黄色く色がつくことはよく見られます。
1,2週間ほどで消えていくので髪を下ろしたり、メイクなどでカバーしていただくと良いです。
あとは、感染に関しては、リスクはありますが鼻先は血流も良い部分ですので、当院ではほとんど感染した経験はありません。
まれなリスクではありますが、手術ですので感染のリスクはあると思っていただくと良いです。感染した場合は抗生剤や排膿・洗浄などで対応することになります。
耳介軟骨移植のリスクまとめ
①鼻だけでなく耳を切開する必要があるため、耳後面に傷、ケロイドができるりすくがあります。しかし、耳が変形するというようなことはありません。
②軟骨は吸収されにくい為、耳介軟骨の形が浮く可能性がある。オステオポールのようにはならない。当院では、移植耳介軟骨を加工しリスクを低減している。
③後戻りのリスク。特に正面は戻りやすいので、しっかり効果を出したい方はストラットを立てるとより効果を得やすい。
④基本的にクローズ法だが、先生によってはオープン法でおこなうので表に傷ができる。
⑤左右差やズレのリスク。当院ではLLC(下外側鼻軟骨)にしっかり固定&プルアウト固定を行うことで、リスクを最小化しています。
⑥手術自体のリスク(腫れ・内出血・感染)
耳介軟骨移植は今述べたようなリスクはありますが、基本的にある程度予防可能で、当院では今お話ししたようにリスクをなるべく減らすように工夫しておこなっています。
もし何かあって気に入らないとか、戻したいという場合は、軟骨を除去してリセットすることも可能です。
鼻先を高くする手術には耳介軟骨移植や鼻中隔延長がありますが、耳介軟骨移植は鼻中隔延長よりリスクは少なく、自然な変化になるので大変人気の施術になっています。
耳介軟骨移植とは?まとめ
耳介軟骨移植についてご説明しましたが、耳介軟骨移植がどんなもので、どんな感じの効果が出るのかわかっていただけましたでしょうか。
基本的には耳の軟骨を採取して鼻先の軟骨に載せ、鼻先に高さを出したり、下方向に伸ばしたりする手術です。鼻中隔延長に比べてリスクは少なく、自然な変化を出すことができます。
耳介軟骨移植でなるべく効果を出したいか、後戻りのリスクを減らしたという方には、同時にストラットを立てる手術をおこなうのもおすすめです。