糸リフトのリスクや失敗について
作成日:2024.7.25
目次
糸リフトとは
切らずに糸のトゲで内側の組織をひっかけてたるみを引き上げてリフトアップするのが糸リフトです。
切りたくないけど、ある程度しっかりリフトアップしたいという方に適しています。
糸リフトは、皮下のSMASというフェイスリフトで引っ張るお顔の支持組織に挿入して顔全体を引き上げます。
フェイスラインやほうれい線部分の中顔面のたるみを引き上げます。
また、ショッピングスレッドと言ってトゲのない糸を格子状に入れることでリフトアップや引き締めを狙う糸リフトもあります。
ショッピングスレッドの場合は下の図のように糸を挿入していきます。
基本的に糸リフトは繰り返し入れることも多いので溶ける糸で行うことがほとんどです。
溶けない糸は、施術を繰り返していくごとにどんどんお顔の中の糸が増えてしまうのと、長期的に感染のリスクがありますので、溶けない糸を使用する先生は少数派です。
糸リフトでは、糸が異物として認識されてコラーゲンが作られ、糸が吸収されながらコラーゲンの繊維に置き換わります。
糸が溶けたとしてもSMASがコラーゲンの繊維で強化されて伸びにくくなりたるみを予防する効果があります。
また、皮膚の下にコラーゲンが増えることでお肌に少しずつ張りが出てお肌が若返る効果もあります。
今回のコラムでは、糸リフトのリスクや失敗について説明していきます。
糸リフトのリスク
①後戻り
直後はしっかりリフトアップしていても、糸はトゲでひっかけてたるみを引き上げますので、徐々にひっかけた組織が伸びて戻ってしまいます。
リフトアップ効果はだいたい1年くらいと思っていただくと良いかと思います。
②切るよりは効果は弱い。
個人差はありますが、 糸で持ち上げるだけの手術なので当然切るフェイスリフトに比べたら効果は弱くなります。
また、皮膚の組織が硬く厚い人などの場合では糸リフトではリフトアップ効果が出にくいことがあります。
③内出血
糸リフトは皮膚の外側、糸の入り口になる部分は先の尖った針で穴を開けますが、中の組織には先のとがっていない針で糸を通します。
その際に浅側頭動静脈などの血管にあたって内出血することがあります。
内出血が落ちてきて、目の周りや頬、首などに黄色や紫などの色味が出ることがあります。
内出血が出た場合は1,2週間ほどで消えていきます。
④腫れ
直後は麻酔と、中の組織のダメージによる腫れが出ます。多くはお顔の側面中心に腫れが出ます。
下方はたるみが引き上がってすっきりとし、腫れで顔の横幅が出ることでお顔が逆三角形になったり丸く見えるようになります。
腫れで頬骨が出たように感じる方もいるかもしれません。
腫れは2,3日~1週間で引いていきます。
⑤痛み、引き連れ、違和感
トゲでひっかけて引き上げますので最初はツッパリ感や違和感、痛みが出ます。
お顔は表情でよく動くところですので、違和感を感じやすいです。
特に口を開けたりすると痛みや違和感が出やすく、最初は口が開けにくくなることもあります。
違和感は1か月以内には落ち着いていきます。
⑥へこみ
糸が浅く入ったりするとその部位がへこむことがあります。
ホホにコケがある場合なども浅く入れるとコケが強調されることがあります。
早いうちなら引っ掛かりを手で押して解除できることも多いです。
解除できなくてもへこみは時間と共に落ち着くことがほとんどですが、浅く入りすぎてしまうと凹みやくぼみが戻らないリスクがあります。
⑦感染
糸は異物ですので、ばい菌がついて感染するリスクがあります。
特に、髪の毛の生え際から糸を挿入する際に髪の毛を巻き込んだりすると感染のリスクが上がりますので、髪の毛が入り込まないように細心の注意を払って糸を入れていきます。
⑧顔面神経麻痺
糸を入れる前に麻酔をするので、顔面神経に麻酔が効いて顔面神経麻痺の症状が一時的に出るリスクがあります。
眉が上げられなくなったり、目が閉じにくくなったり、口角が上がりにくくなったりします。
当日中に麻酔が切れていくと共に治りますので一時的なリスクになります。
また、まれですが針を深い層に入れてしまうと、眉を上げる筋肉である前頭筋を支配する顔面神経側頭枝がダメージを受けてしまい眉が上がりにくなって麻痺が残ってしまう可能性があります。
神経を切断するわけではないのでその場合も数か月~半年かけて治っていくケースが多いですが、起こしてしまわないように適切な層に糸を挿入していくことが重要になります。
⑨高く売りつけられるリスク
美容外科のチェーン店の中には、安い施術でお客さんを呼んで、営業をかけ高く糸を売りつけてクレームになっているのは有名な話です。
自費診療なので自由に値段をつけて納得の上で行うのは良いとは思いますが、高いお金を払って、簡単な施術ですぐ元に戻ってしまっては不満に思ってしまう気持ちもわかります。
基本的に糸リフトの種類による効果の差はそれほど大きくありません。
料金に比例して長持ちする、効果が高くなるというわけではありません。
糸に限らず、ご自身がおこなう施術については、一般的な価格をご自身で調べてからおこなっていただくのが良いかと思います。
糸リフトの失敗
次は失敗について説明していきます。
リスクとかぶっていますが、適切な操作によって回避が可能なことを失敗として、糸リフトの失敗について挙げてみます。
①へこみ
リスクでも述べましたが、通常のへこみであれば用手で解除が可能だったり、待てば1か月以内に落ち着きますが、あまり浅い層に入れてしまうと凹みが治らず残ってしまう可能性があります。
浅すぎる層は入れた感触や見た感じでわかりますが、不慣れな術者がおこなったり、攻めすぎたりするとそのような失敗を引き起こしてしまう可能性があります。
糸リフトに慣れていない先生や新人の先生におこなってもらう場合は注意が必要です。
長期間経過をみれば凹みは改善する可能性はありますので、ヒアルロン酸などで可能な範囲でへこみを目立ちにくくさせて様子をみることになるかと思います。
②顔面神経麻痺
先ほども説明したように、麻酔が原因による一時的な麻痺の場合は当日中に落ち着きますが、問題になるのは麻酔が切れても麻痺が残ってしまった場合です。
側頭部から深い層に針を入れると、顔面神経の側頭枝にあたってしまう可能性があるので側頭部は慎重に針を入れていく必要があります。
慎重にやればリスクは回避できる可能性が高いですが、不用意に深い層に針を入れてしまうと側頭枝がダメージをうけて眉が上がりにくくなってしまう場合がまれですがあり得ます。
熟練した先生でも100%起こらないと断言はできませんが、ほとんど回避はできますのでそういった意味で顔面神経麻痺が起ってしまった場合は失敗と言えるかもしれません。
ただ、針で糸を挿入する操作なので顔面神経を完全に切断しているケースは少なく、数か月~半年の経過をみれば治っていくケースは多いようです。
まとめ
糸リフトはフェイスリフトなどの切る手術に比べて手軽にできてリスクは少ないですが、通常の手術のように腫れや内出血、違和感のリスクはあります。
やり方が悪いと不可逆的な失敗になる可能性はわずかですがあるので、ノーリスクというわけではありません。
やはり術者は慎重に選ぶに越したことはないです。 ただ、基本的に切る手術ではないので何かあった際も時間と共に戻っていくことがほとんどなので、2,3日~1週間ほどのダウンタイムをみていただければ、ある程度安心しておこなえる施術かと思います。
切らずに手軽にたるみを改善できて、何度もおこなえる施術で、たるみの予防効果や、お肌にハリを出す効果がありますのでたるみが気になる方にはおすすめです。